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AEFバイオノベル 【1】週刊メールマガジン『エスノキッズ 心の学問 「自伝編」「教学編」』バックナンバー 【2】東亜学纂のe伝記小説。冒険、ミワラ〈美童〉、そして幻想。『亜種記』全12巻、順次発刊。著者、南内彬男(なんだいあきお)。 発行、// AeFbp // 東亜学纂。

一息 45【オオカミの後裔記】謎の城壁、角楼に現れた青年(明かされる知命への道と立命の志)『離島疎開12』

東亜学纂のAEFバイオノベル ( =^ω^)
後裔記『離島疎開』編(上)
令和2年11月14日(土)号

一つ、息をつく。

〔 謎の城壁、角楼に現れた青年(明かされる知命への道と立命の志) 〕

 「どこかで見た風景なんだけどなーァ」と、峠を下る道すがら、ずっとそのことが頭から離れなかった。峠道を下りきったところで、やっと竹林を抜ける。頂から垣間見えた城壁は、城内を防御するための石塁や土塁だった。その門前に立ったとき、一つの記憶が甦った。学園の図書室に置いてあった、『城の遺跡』みたいな{題名|タイトル}の本。その中にあった、数点の写真。たしか、{鬼|き}ノ{城|じょう}。

 次。城門を潜って、角楼に上る。その城内の全景は、間違いなく最近、夢の中で見たものだった。
 角楼は、シンジイに伴われて上ったものだったが、「ここで待つように」と養祖父に告げられたスピアは、暫し無言で、シンジイの後ろ姿を目で追っていた。

 {然|しか}し、こんな{山間|やまあい}に城壁とは! まるでアリ地獄の底。尾根から狙われたら、{一溜|ひとたま}りもない。城内の地形も、腑に落ちない。まさに、文明が盛り土によって描いた自然の傷跡。そんなことを考えながら、場内をぼんやりと見遣っていた、そのときだった。爽やかだがどことなく低音に威厳を漂わせた声が、背後から聞こえてきた。

 「唐城……と言いたいところですが、強いて{譬|たと}えるなら、鬼ノ城かな。その唐と{新羅|しらぎ}の連合軍と戦って、大和朝廷は大敗した。そこで朝廷が造らせたのが、鬼ノ城です。{史|ふみ}の{類|たぐい}に記載があるわけではないので、それが史実かどうかは定かではないようです。

 でも、本当に驚くのは、この城のほうです。当時の日本、{倭|わ}の国に、大和朝廷以外に鬼ノ城と同等の城を築くことができた大勢力が、この瀬戸内に存在した。その真実のほうが、{余程|よほど}か真価に勝るというものです。今は、HGVテクニカルセンター東工場ですけどね」

 透かさず、スピアが応えて言った。
 「ヒノーモロー・ガター・ビーアコ社と、略称が一緒だね。HGVって」

 おれが振り返ると、背筋を伸ばした長身の青年が、立っていた。まさに、品行方正。その顔が、穏やかな驚きを{湛|たた}えている。そして、感嘆の{言乃葉|ことのは}が、一枚。

 「驚いたなーァ」
 (そのまんまじゃん!)と、思うおれ。
 「なーんじゃ、そりゃ!」と、これもおれ。
 「図書室で読んだんだ。『夢の電車・開発競争』みたいな題名の本」と、スピア。

 「学園、ちゃんと通ってるんだァ。今どき、感心な学童だね」と、青年。
 「学園っていうか、図書室だよ。一日中、図書室に居たんだ。今は、借りたらすぐに帰っちゃうけど」と、スピア。
 「君にとっては、図書室が学園ってわけだね。それでいいと思います」と、青年。
 「それでいいって、それでいいんですかァ?」と、おれ。

 「はい。書の中で先人に学んだら、さっさと帰るか家を出るかして、あとは行動あるのみです。学園の椅子に腰かけて黒板を眺めてたって、タケラにはなれませんからね」と、青年。

 「それって、知命と立命のことですかァ?」と、おれ。
 「それ、シンジイに訊けって言ったじゃん」と、スピア。
 「おれに振ったじゃないかァ、おまえ!」と、おれ。
 「まァまァ」と、青年。そして、{間|かん}、{髪|ぱつ}ほど入れて、また青年。

 「それでいいとは言いましたけど、挙業が無意味だって意味じゃありません。聖学の妨げになるものでもない。ぼくは、そう思いますけどね」

 「なーんじゃ、そりゃ! だろッ?」と、スピア。おれの顔を覗き込む。
 「じゃあ、おまえは、{解|わか}ったんかい!」と、おれ。
 「わからん」と、スピア。一言。
 「まァまァ。でしょ?」と、おれ。姿勢を正して、青年の顔を、覗き見る。

 「ですです。挙業というのは、君らが嫌いな机の上での勉強のことです。教室で先生の講釈を聴いたり、試験のために面白くもない真実なんてどうでもいいような危うい教科書を読んだりすること。聖学というのは、君らが好きな板の間に座して学問をすること。聖賢な人物になるためです。そして、タケラになるための一番の近道が、行動と体験から学ぶことです。こんな説明で、解りますかァ?」と、青年。おれらのほうに、目を配る。

 「うん。なんとなく」と、スピア。即答。
 「でも学園ってさ、なんか居心地悪いんだよね」と、おれ。

 「解ります。ぼくも、そうでしたから。と言っても、ぼくがミワラだったころは、まだ小学校とか中学校とかって、呼ばれてましたけどね。教室で、自分を大切に扱ってくれない{輩|やから}に囲まれていると、居心地が悪い。心が動揺するからです。自分の考えと異なることを力説している本を読んだときも、やっぱり同じように、心が揺れます。だから、行かない。だから、読まない。そんな自分にするって自ら決めて、そのまま{放|ほ}ったくって投げ散らかしたまま聖学を志したところで、果たしてうまくいくものでしょうか。どうですかッ?」と、青年。

 「まあ……」と、おれ。暫し、広大な城内を見渡す青年。そして、誰にともなく、呟くように言った。
 「失敗も、失恋も、そして敗戦でさえ、ぼくは、恥とは思いません。それよりも、そのために心が動揺することのほうが、よっぽど恥と思う。要は、聖賢となる志を立てて、運命の実を挙げようとする至誠を持つか持たないか、そこだと思うんです。その誠実さを持たなければ、たとえ挙業という任にも{堪|た}えながら聖学を志したところで、結局は私利私欲と保身の殻に閉じ籠もり、{虚空|こくう}に{馳|は}せて終わってしまう。神は、{青人草|あおひとくさ}を、この前者と後者に分け隔て{賜|たも}うたのです」

 青年は、そう独り{言|ご}ちると、スピアのほうに向き直って、改まって言った。

 「知命と立命。君の新しいお爺さん、養祖父は、君にどのように説明してくれたんですかァ?」
 突然の問いかけに、スピアは{狼狽|うろた}えた。
 青年が、言った。

 「知命を目指して同じ修養をするんなら、己の理想を天命として知るべしです。君の{新爺|しんじい}は、それを大理想と呼んでいましたけどね。会社も、生き物です。だからここの会社も、理想を掲げています。新爺の言う大理想には、遠く及びそうもありませんけどね」

 「この会社の理想ってぇ?」と、スピア。

 「万物一体の仁。『なーんじゃ、そりゃ!』ですよね?

 会社というのは、いろんな専門分野ごとに、分業されています。社員は、そのどれか一つに、専念する。{所謂|いわゆる}ジョブ型です。でも、それだけだと、自分に与えられた仕事以外のことは、まったく{判|わか}らないままです。{況|ま}してや、社会全体や自然界のあれこれに到っては、判断がつくかどうかどころか、その存在を意識することすら薄れていってしまいます。それでも、自分の役割は果たしているわけですから、会社の歯車としては、良品で合格というわけです。

 でもね。自分の仕事を、責任をもって{熟|こな}す? それって、合格以前。当たり前の話です。『個人は、社会と一体となって、全体のためになることを実践せよ、人間は、自然の一部となって、大きな一つを為せ』と、これが、この会社の{是|ぜ}です」
 「ぜッ?」と、スピアとおれ。眉間に{皺|しわ}を寄せて、声を揃える。

 「そうです。すべての{物|ぶつ}は、心を通じ合って、繋がっています。それが、{万物|ばんぶつ}です。油まみれの工員たちも、越冬を終えて去り渡りゆく真っ白い鳥たちも、心という部分では通じ合って繋がっている、という考え方です。

 心が通じてさえいれば、自分が相手のために、延いては全体のために何を為すべきか、誰彼に教えられなくても、判るはずです。それが、知るということです。知ってさえいれば、行動ができる。行動は、仁を為す。仁は、徳と成る。それが、心です。それが、知行合一というものです」

 青年は、そこまでを言い終えると、今度は、その身を馳せるかのように、城壁を越えて、東の彼方から昇る太陽を見据えた。でも、吠えることはしなかった。その様子をぼんやりと眺めていたスピアが、笑顔で言った。

 「有事斬然。だねッ?」
 「それも、君の新爺の談ですかァ?」と、青年。念のため、訊いてみたって感じ。
 「違うよ」と、スピア。
 「うぅ?」と、青年とおれ。揃って、喉仏を鳴らす。
 「カモメだよォ」と、スピア。
 「嗚呼、女隊長さんね♪」と、青年。何故か、嬉しそう。

 タン・トン、タン・タ・テ、チーン♪
 ラッパの響きと共に、城内の万物が、一斉に動き出した。

 活きた朝。
 自然の一部たちの、柔軟体操。

2020年11月14日(土) 活きた朝 2:47
学徒、オオカミ

令和2年11月14日(土)号
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