// AeFbp // A.E.F. Biographical novel Publishing Akio Nandai Volume 1 to 12 VIRTUE KIDS VIRTUE is what a Japanized ked quite simply has,painlessly,as a birthright. A.E.F. is an abbreviation for Adventure, Ethnokids , and Fantasy.

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AEFバイオノベル 【1】週刊メールマガジン『エスノキッズ 心の学問 「自伝編」「教学編」』バックナンバー 【2】東亜学纂のe伝記小説。冒険、ミワラ〈美童〉、そして幻想。『亜種記』全12巻、順次発刊。著者、南内彬男(なんだいあきお)。 発行、// AeFbp // 東亜学纂。

一息 42【スピアの後裔記】峠を下る(ウリ坊の大努力)。海岸に出る(カモメの六然)『離島疎開9』

『離島疎開』そのとき、ミワラたちは!?
彼ら彼女たちの日記、今夜の後裔記は……。

エスノキッズ 心の学問「自伝編」
令和2年10月24日(土)号


一つ、息をつく。


〔 峠を下る(ウリ坊の大努力)〕

「あ、すったこらせーの、どっこらしょッとーぉ♪」
と、養母カアネエの口癖を、真似てみた。

(悪くない。よくもないかァ)
と、何気に思う。

下り坂。
上体を後ろに反らせて、機能的に歩く。
にわかに競歩。
やにわに小走り。

と、そのときだった。

目の前の林道を、小動物が横切った。
深夜の大雨で朱色(あけいろ)を露わにしている赤土の斜面を、四つ足で巧みに駆け上がる。
(……はずだったんだろうな)と、思わず失笑が漏れる。

蔓(つる)植物と木の根っこをかわそうとしているのは、見てわかる。
でも、現実の映像は、容赦なかった。
高速回転している短い脚(あし)は空を切り、唯々(ただただ)赤土をボロボロと蹴り落とすばかりだった。
こうなってくると、訊(き)いてみたくなるのが、人の道!
心の中で、問いかけてみた。

(君さァ。
なんでそんなに、頑張るのォ?)

ウリ坊が、応えて言う。

「ギャーァ!
うぎゃあ?
大努力さ」

(なーんじゃ、そりゃ!
まァ、わかったわかった。
努力してんのは、見りゃわかるよ。
何を目的に、その無駄な大努力とやらをしてんのか、それが疑問だったんだけどさ。
わかった、わかった。
ゴメン、ゴメン)

と、素直な感想を、独り言(ご)ちるように思った。
するとウリ坊、問われたわけでもないのに、ぼくの思い呟きに応えて、言った。


「ギャーぁ!
うぎゃあ?
あほかァ!
だからその答えが、大努力なんだってばァ。

修養によって、貴い者になる。
研究によって己の美質を発見し、能力を発揮する。
有為有能(ういゆうのう)な者となる大理想をもつ。
自ら苦しみ、開拓し、本物になる。
他者が寝るところは半分にし、他者が食うところは半分にする。
努力するところは常に元気で、他者の十倍も二十倍もやる。
心身疲労で病気病死したときは、まさに天命と諦(あきら)める。
学徒が学問のために死ぬのは、本望(ほんもう)と心得る。

うぎゃあ?」


(だからおまえ、高速回転させとったんかい!)
と、思うぼく。

「そこかい!
なんでやねん!」

と、応えて嘆(なげ)くウリ坊。

(てか、おまえ。
学徒だったんだァ。
失礼しました。
邪魔しないから。
まァ。
頑張れッ!)

と、思いを伝えるぼく。

「ギャーぁ!
うぎょ♪
うぎょ♪

天命、本望。
天命、本望。
天命......
本望......

うぎゃあ?」

と、下る坂道の右斜め後方より、何やらそんな気配......言(こと)の葉が、音速で追ってくる。

「あ、すったこらせーの、どっこらしょッとーぉ♪」
と、ぼくは言って、小走りを再開した。

(それってさァ、ぼくの口癖にはしたくないよねぇ?)
と、ぼくの中で、誰かが言った。


〔 海岸に出る(カモメの六然(りくぜん))〕

坂道を下りきると、奥まった入江の岸辺に突き当たる。

峠の林道は、ところどころに白舗装が朽ちたセメントの欠片が、割れたり剥がれたりしてゴロゴロしていたけど、海岸の沿道は、砂利が天然で塡圧(てんあつ)されたような路面だった。

その路面に、一列になって整列している。
美しき整然。
どう見ても、カモメ!

その沿道に、足を踏み入れる。
一歩目。
その途端、カモメたちは、一斉に飛び立った。

それを見届けるかのように、少し遅れて、最後の一羽が飛び立とうとしている。
細身で、真っ白と薄グレーの鮮やかなツートンで、目は無邪気に丸っこく、嘴(くちばし)はシャープなのに、どこか艶(つや)っぽい。

こうなると、やっぱり問うてみたくなる。
厄介な能力が、身に着いちまったもんだッ!
てか、これが、生まれ持ってた何とかってやつーぅ?

(ねぇねぇ。
ちょっと待ってよーォ♪
カックイイじゃん!
海の忍者みたいだね)

「カーゥ、カーゥ、カーゥ♪
あたいたちのことーォ?
六然(りくぜん)だからよ」

(それって、海の忍者のことォ?)
と、ぼく。

カモメ、翼を広げたままの格好で、ぼくのほうに振り返る。
首を、傾(かし)げる。
そして、言った。


「カーゥ、カーゥ、カーゥ♪
六つの自然態(しぜんたい)のことよォ。

自處(しょ)超然 カゥ! 自ら処すること超然♪
自分自身に関しては、いっこう物に囚われないようにする。

處人藹(あい)然 カゥ! 他者に処すること藹然♪
他者に接して相手を楽しませ、心地よくさせる。

有事斬(ざん)然 カゥ! 有事には斬然♪
事があるときは、ぐずぐずしないで活発にやる。

無事澄(ちょう)然 カゥ! 無事には澄然♪
事なきときは、水のように澄んだ気で居(お)る。

得意澹(たん)然 カゥ! 得意には澹然♪
得意なときは、淡々とあっさりして居(お)る。

失意泰(たい)然 カゥ! 失意には泰然♪
失意のときは、泰然自若(落ち着いていて、物事に動じないさま)として居(お)る。

じゃあ、またねぇ。
カーゥ、カーゥ、カーゥ♪」


無駄のない返答。
無駄のない翼の動き。
今まさに、羽ばたく。

お礼に添えて、もう一つ。
質問を投げる。

(ありがと。
てか。
ねぇ。
あの歩いて逃げてるヤツも、仲間なの?
あれも、六然?)

カモメ、朱(あけ)た足を浮かせて、応えて鳴く。

「あれね。
ちょっと、世間をなめてるわね。
でも、どこか憎めないところが、憎いところなのよね。
あのこは、ウミネコ。
わかりやすい種だから。
すぐにわかるわよッ♪
誰かに訊かなくてもね」

カモメは、飛び立った。
ウミネコは、依然、歩いている。

青空に飛び立った水兵たちの嘴は、サクランボ色で、先っぽだけが黒っぽい。

歩いてのらくら逃げているウミネコが、ぼくの気配を感じ取ったかのような素振りで、振り返った。
そいつの嘴は黄色で、先っぽだけが赤く、飛行不足でメタボなのか、何やらぽっちゃりとしていて、目は素っ頓狂だ。

声は......べつに、聞きたいなんて思わないけど、鳴くんだろうな。
たぶん。
訊いてもないのに。

ウミネコが、首を後ろに捻(ひね)ったまま、歩きながら言った。

「アーン♪ アーン♪」

無我無心!
唯識(ゆいしき)の心境!

ウミネコ、再び前を向いて、お尻を大きく振りながら、歩き......というか、逃げはじめる。
ぼく、それを、歩いて追う。

ウミネコ、小走り。
ぼくも、小走りで追う。

ぼく、追いついて講釈を聴かされるのはゴメンだったから、立ち止まる。
ウミネコも、立ち止まって、振り返る。

(こいつも、あれはあれで、大努力なのかもしれないなッ♪)

おっと!
いかん、いかん。

無我無心、唯識......
無我無心、唯識......


2020年10月23日(金) 活きた朝 2:27
少年、スピア


令和2年10月24日(土)号
一息 42【スピアの後裔記】峠を下る(ウリ坊の大努力)。海岸に出る(カモメの六然)『離島疎開9』

◎ 寺学舎由来の各種呼称について

1.立命期の学年
 少年/少女 → 学徒 → 門人 → 学人。
 誕生して知命する(学人のころ)までが、立命期。

2.ミワラ〈美童〉
 立命期の学童たちの呼称。

3.美童名(みわらな)
 立命期の個々の学童の呼び名のこと。
 武家社会の幼名のようなもの。
 「生まれもった美質を護ってほしい」という先人たちの願いが、込められている。

4.タケラ〈武童〉
 運命期の学童たちの呼称。
 知命したのち、天命に到るまでの長い道程が、運命期。
 武の心(戈(ほこ)を止(とど)めさせる人間力)の修養に努める生涯学童。

◎ 『離島疎開』編について

寺学舎最盛期の塾生だった我々編纂有志でさえ、多感なミワラたちの体験や学問の行間を読むことは、たいへん困難なこと。
それ故の策として、亜種記『運命の孝、闘う宿命』を参考として、真実を読み解くことに努めている。

◎ 後裔記と然修録について

1. 発祥

寺学舎に通っていた一部のミワラたちが、日記や学びの感想を共有して、共同体感覚の修養をはじめた。
その日記が後裔記、学びの感想が然修録。
寺学舎とは、瀬戸内で嘗(かつ)て古(いにしえ)の時代に栄えた港町に根付いていた寺塾のこと。
その港町に隣接する寂(さび)れた浦々にも、ミワラたちが住まっていた。
そこは、「平家の敗残兵が密かに身を隠して、今に到っている」と、伝えられてきた地。
『平家物語』巻第十一では、彼らの祖先を率いた名将の武勇が、描かれている。
その浦々から谷川沿いに峠を上り尾根を越えると、その先に、原っぱが拡がるような町が現れる。
その地が、彼らの先祖が最期を飾った古戦場。
後裔記と然修録も、所謂(いわゆる)末裔(まつえい)の諸書だが、自らを後裔(こうえい)と称した名残を今にとどめる。
子々孫々の学童たちは、先人たちの心情を、慮(おもんばか)らずにはいられなかったのだろう。

2.現在

嘗て栄えた港町に根付いていた寺学舎は、今は存在しない。
お寺の講堂の佇まいは変わっていないが、そこに集う学童たちの姿は、今はもうない。
隣接する寂れた浦々では、子どもたちの姿を見ることさえ、稀になってしまった。
然し、その浦々の隠れたところで、郷(さと)学舎という名の家塾が、今でも寺学舎の衣鉢(いはつ)を継いでいる。
2020年2月、その家塾に集っていたミワラたちの後裔記と然修録を、メルマガという手段で公開した。
だが、その8月。
彼らは天災とも人災ともつかない災難によって、離島へと疎開して行く。
学友たちと住まいを隔て、島を隔てて独学を余儀なくされた浦々のミワラたち。
貧しい彼ら彼女たちだが、メルマガやブログといった少々古臭いテレスタディで、学友たちと日常知を共有している。

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