// AeFbp // A.E.F. Biographical novel Publishing Akio Nandai Volume 1 to 12 "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright. A.E.F. is an abbreviation for Adventure, Ethnokids, and Fantasy.

AEFバイオノベル

**東亜学纂の eBOOKs**  == 週刊メールマガジン『エスノキッズ心の学問』 == メルマガ選集ブログ『AEFバイオノベル』 == 電子書籍『亜種記』全12巻 順次発刊

一息 7【自分は要らない人間だと言って胸を張る奇妙】少年、サギッチ

_/_/_/
『 後裔記(こうえいき)
ー 自伝(じでん)、エスノキッズと呼(よ)ばれた塾生(じゅくせい)たち ー 』

元気(げんき)にご挨拶(あいさつ)。
自修塾(じしゅうじゅく)です。
ぼくらの先輩(せんぱい)たちの自伝(じでん)、読(よ)んでみませんか。
心(こころ)が、元気(げんき)になります。
それって、簡単(かんたん)なことなんです。
_/_/_/ BIO.KR0202220004


一つ、息(いきを)つく。

おれの新しい名前、サギッチでいいや。
おれは、サギッチって呼ばれてきたから。
おれのことをそう呼ぶのは、一人だけだけど。
あいつの新しい名前、何(なん)だっけ。
そうだ。
スピアッジャ。
意味は、浜辺だったけぇ?
あいつ、海が好きだからな。
でもおれは、スピアって呼んでる。
長いのが、嫌いなんだ。
何でも。
だから、短くする。
覚えるのが、苦手なんだ。
苦手なのは、ぜんぶで三つ。
長いもの、読むこと、書くこと。
だからこれ、後裔記っつーのォ?
爆イヤ!
でもさ。
スピアが入塾するって言い出したから、しょうがないじゃないの。
おれも、入塾する。
だから、書くしかない。
あいつみたく変なやつ、また探すの面倒だし。
変じゃない普通のやつらは、すぐに飽きちゃうんだ。
おれ。

今日も、スピアと一緒だった。
釣りに出かけた。
峠を下ると、港に出る。
いつも行く突堤(とってい)は、工事中。
4トンユニックのトラックが、消波ブロック(テトラポット)を下ろしている。
民家も見えないし、人も滅多に来ない。
なんでこんなところに護岸工場が要(い)るのか。
まったく理解できない。

港の反対側で、カモメたちが水泳教室をやっている。
それを面白がって、不器用なトンビたちが群がっている。
器用に泳ぐカモメの子どもたちの上空を、ただ舞っているだけ。
まるで、グライダー。
ほかにも、何やらいっぱい集まってきた。
カラス。
あいつらって、目が、節分でお祓(はら)いして煎(い)った大豆(だいず)みたいで、可愛い。
あれ、サギかな。
なにやら、親しみが湧く。
おれの名前も、鷺(さぎ)だから。
海鵜(うみう)。
あいつの不格好な離陸、てか離海?
どうにかしてほしい。
でも、苦しもがいて飛び立つその勇姿。
やっぱりおまえらは、偉い!

スピアが言った。
「今日は、あっちだね」
「だな」と、おれ。
港の反対側まで歩く。
間もなく目的地。
第一村人(だいいちむらびと)、発見できず。
でも、その代わりにというか、カモメが一羽、歩いている。
追いつきそうになると、急に立ち止まり、パコッと首だけ回して振り返り、アッ!っと慌(あわ)てるように、走り出した。
これがけっこう、速い。
それでも、おれらとの距離は、詰まってゆく。
カモメ、立ち止まる。
少しだけ首を回して、おれらをチラ見する。
固まった!
そのまま首を戻して、水泳教室を見遣(みや)る。
そのすぐ横を、おれとスピアは変わらぬ歩調で、追い抜いた。

カモメたちの水泳教室が、工場(こうば)の建物の影に隠れた。
この辺に、目指す対岸の突堤があるはず。
少年二人、うろうろ。
だっておれらは、飛べないから。
やっとこさで、突堤視認。
その突堤は天然石でできていて、何百年も前に造られたみたいで古めかしい。
道路からその突堤に繋がる部分は、近代的な防波堤。
それが崩壊して、鉄筋コンクリートの箱型の基礎地盤(ケーソン)が露出している。
要するに、突堤には行けない。
「こっちを先に工事しろよッ!」
この防波堤が災害で崩壊して以来、第一村人は、今日のおれらだったのかもしれない。

それはともかく、その古めかしい突堤は、工場の敷地の中の岸壁から延びていた。
その辺りには屋根もなく、二人かな、三人かな、人影が見える。
みんな、同じ色の作業服を着ている。
無断で、ちょっとだけ、恐る恐る、工場の敷地の中に入る。
スピアが言った。
「すいませーん。ここ、通っていいですかーァ? あそこの突堤で釣りしたいんですけどーォ」
スピアの誠心誠意が、おれにまで伝わってくる。
おっちゃんたちの返事は、わかりきっていた。
「釣れすぎて運ぶのに困ったら、そこのクレーンで吊ってやるよッ♪ 足元悪いから、気を付けてなッ!」
ほかに、どんな返事を想像し得ようかッ!
ところがどっこい、実際の返事は......。
一人のオッサンが、面倒臭そうに、応えて言った。
「事務所、あっち。おれら、ただの工員だから」
おれがやっとその言葉を聞き終えたころ、スピアは既にクルリとそのオッサンに背を向けて、スタコラと工場の敷地の外へと歩き出していた。
二人とも外に出ると、スピアが言った。
「あのカモメ、なんで逃げなかったのかなあ。まあ、いざとなったら、飛べるしね ♪ 」
「そっか。あいつらには、それがあるんだよな......てかさッ。そうじゃないっしょ! つっかさッ、コーインって、なにぃ?」と、おれ。
「従業員」と、スピア。
「わかった。社員だな ♪ …...で、なんでタダなん?」と、また訊(き)くおれ。
「要(い)らないってことさ」と、スピア。応えて言う。
「じゃあ、あのオッサンたち、要らない社員ってことォ?」と、おれ。
「そうじゃない? だって、自分でそう言ってるんだから」と、スピア。
話は、終わった。

スピアが、カモメの水泳教室を眺めながら、言った。
「一年生ってさ。好き勝手に、いろんなところを泳ぐんだね。危なっかしい! ぼくらもこれから、そうなるのかな。一年生になるんだから」
おれは、「一年生ねーぇ......」と、ひとりごちて応えただけだった。
あとになって、思った。
「ぼくら......ってえ?!

歩きながら、スピアに言った。
「釣り、どうする? カモメに、訊いてみるう?」
「波に聞けって言われるのが、オチさ」と、おれ。
「そこは、潮(しお)だな。釣りだけに」と、スピア。
「潮時(しおどき)ってことね?」と、おれ。

釣竿の先で小動物たちの頭を小突きながら、峠道を登った。
下りはじめるとすぐに、スピアに訊いた。
「なあ、なにする? これから」
スピアが、応えて言った。
「オセロ」
「白黒ハッキリした遊び、好きだよな。おまえ」
と言って、スピアの顔をチラリと見たが、表情に変化なし。
それから、オセロでおれに勝つまでの数時間、スピアの口が開くことは、ただの一度もなかった。


◎今日の登場人物
◯スピア、サギッチ、走るカモメ、要(い)らないオッサン

◎然修の学
立命とは …
己の中にある本物(ほんもの)のこと。
循令(じゅんれい)によって成長する。

◎蛇足(オマケ)
「偽物(にせもの)だから、自分のことを要(い)らないって言ったんだなッ!」
by サギッチ。


_/_/_/
自修塾(じしゅうじゅく)の読み物

『 後裔記(こうえいき)

  • 自伝、エスノキッズと呼ばれた塾生たち - 』

メールマガジン
https://www.mag2.com/m/0001131415.html
◎ブログ
https://shichimei.hatenablog.com/

『 然修録(ぜんしゅうろく)

  • 教学、エスノキッズと呼ばれた塾生たち - 』

メールマガジン
https://www.mag2.com/m/0001675353.html
◎ブログ
https://shichimei.hateblo.jp/

『 亜種記(あしゅき) - 冒険エスノキッズ - 』
◎ 非電脳紙媒体(ひでんのうかみばいたい)
_/_/_/